執筆者:こばやし助産師
子宮下垂、子宮脱とは、子宮の位置の異常です。
子宮下垂…子宮は膣の方へ下がること
子宮脱 …膣を通り抜けて完全に身体の外にとびだしますこと

わたしたち人間は二足歩行をするため、つねに身体の下へ下へと重力を受けながら生活しています。
重力によって骨盤内臓器(子宮・膀胱・直腸)がずり落ちないのは、骨盤の底に内臓を支える筋肉やじん帯
があるからこそです。
骨盤の底には、骨盤底筋というハンモッグ状の膜のような筋肉が
張り巡らされていて、
骨盤内にある3つの臓器(骨盤内臓器)はすべて
骨盤底の筋肉とまわりのじん帯で前後、左右に支えられています。
骨盤底が強くしなやかでキュっと収縮する力を備えているからこそ、
わたしたちは排尿や排便をコントロールすることができるのです。

骨盤底の筋肉がなんらかの理由で弱くなったり、じん帯がのびてしまったり 傷ついてしまうと、3つの臓器を支えきれなくなり、重力のままに 骨盤の下に落ちてきてしまいます。 子宮は膣の方へ下がってきます(子宮下垂)。 もっとひどくなると膣を通り抜けて完全に身体の外にとびだします(子宮脱)。
おしもに何か物があるような感じがしたり、重苦しい感じ、 なにかが落ちてきているような感じというのもよく聞かれます。
膀胱と直腸も子宮と一緒に下がってくる場合があり(骨盤内臓器下垂)、すると、ちょっと腹圧が かかっただけで尿漏れが起こったり、ひどくなると膀胱に尿が溜まっていることにも気づかず 尿失禁を起こしたり、便秘にもなります。
・出産中と産後の骨盤内臓器下垂の原因/・骨盤を締めて骨盤底の負担を軽くしてあげよう
ママの骨盤のゆるみ、ゆがみの回復を無視した
間違ったケアや行動が疲労こんぱいの骨盤底に追い打ちをかける!
お産のとき、赤ちゃんが産道にいる時間が長くなると、陣痛のたびに赤ちゃんの頭が
グイグイと骨盤底を圧迫し続けます。短時間でスムーズなお産だと
骨盤底の疲労は
最小限で済みますが、時間がかかればかかるだけ、筋肉やじん帯の
疲労度が増し
て、骨盤底は柔軟性を失って収縮できなくなってしまいます。
長袖のTシャツの袖を左右から持って綱引きをしたと考えてみてください。 ほんの少し引っ張っただけなら袖は伸びてしまうことはないかもしれません。 でも、本気で思いきり引っ張ったなら、Tシャツの袖は伸びきって 戻らなくなり、もう二度と着られなくなってしまいますね。骨盤底でも同じような現象が起こるのです。

ママの骨盤がゆがんでいると、赤ちゃんが通り抜けていく産道側に骨盤の骨の一部がグニャっと曲がって入り込んでいることがあります。 赤ちゃんは出っ張った骨に進行を遮られて正しい方向に下りていくことが できなくなります(回旋異常)。 お産はその時点で滞り、ストップしてしまいますね(分娩遷延)。 このように、ママの骨盤がゆがんでいると長期戦のお産となり、 それが骨盤底に過度な負担をかけ、骨盤内臓器下垂の原因を作るのです。

ママの骨盤のゆるみ、ゆがみの回復を無視した間違ったケアや行動が
疲労こんぱいの骨盤底に追い打ちをかける!
昔は、お産の直後に子宮の収縮を促し産後の復古を助ける目的で、
どこの産院でもあたりまえのようにマジックテープ式のウエストニッパーなどで子宮の位置を強く締めていました。
しかし、1997年の助産師の専門雑誌に
『産後の早い時期にウエストニッパーなど胴回りを強く締め付ける
下着類や産じょく4~6週間より手前の腹筋鍛錬などは、骨盤底の復古にとって有害であり、後年の性器脱の原因になる』
という、これまでの常識を覆す研究論文が発表されました。
骨盤は、妊娠性のホルモンであるリラキシンの作用で妊娠直後からゆるみはじめます。
お産のとき、赤ちゃんの頭がスムーズに通り抜けられるようにママの骨盤は最大限に開き、お産が終わるとホルモンの影響が薄れていくにしたがって、産後3~4ヶ月かけてゆっくり閉じて元に戻っていきます。
風船を思い浮かべてみてください。
控えめに膨らませた風船の上側をぎゅっと握ると、圧が下に逃げて
風船の下側が膨らみますよね。
産後の骨盤もそれと同じ原理だと考えてください。
産後の子宮をウエストニッパーで締めれば、骨盤の下部が開いて下垂
している骨盤内臓器をさらに骨盤底に向かってグイグイと圧迫すること
になります。
子宮が復古するのを助けるどころか、下がった子宮(※出産
直後には子宮を支えるじん帯や骨盤底の筋肉が伸びきった状態になるので、
子宮は通常の位置より下がっています。)を支えるじん帯が張りつめるので、
子宮は収縮することができなくなります。
産後に締めるべきは子宮ではなく骨盤です。 ゆるんだ骨盤が閉じて固まる産後3~4ヶ月までは、 骨盤内臓器を定位置に引き上げてあげることで、 産後の復古がよくなるのです。

骨盤内臓器下垂は、横になると症状が楽になります。重力にともなって骨盤内の臓器が下がるのですから、寝ているときには症状は 出ません。朝より夕方以降に調子が悪くなるというのも特徴です。骨盤内臓器下垂や脱は、命に関わる病気ではないですが、いちじるしく生活の 質を落としてしまう深刻な症状なのです。
出産後もずっと、一生つき合っていく 大切な自分の身体です。 だから! 妊娠中から骨盤をゆるみすぎないよう、ゆがませないようケアを開始しましょう。 重力に負けない、強い身体をずっと維持できるといいですね。















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